東京高等裁判所 平成10年(ネ)49号 判決
二 右認定によると、被控訴人らは、本件ゴルフクラブの開設に当たり、会則に会員数を四五〇名と定めることにより、少数会員制を採用し、会員に対し他の一般のゴルフ場とは異なる高級なゴルフ場とすることを本件ゴルフクラブの基本方針とし、それを売り物として会員を募集したことが明らかである。
一方、開発事業費を全額銀行融資でまかないその返済をすべて払込金をもってするという被控訴人らの計画の下では、会員数を少数に維持することは必然的に払込金の額を高額にすることになるから、被控訴人らは、事業遂行のための重要な基盤である資金面についても、会員が少数であることを前提として計画を立て、少数会員制という方針の下に会員に高額の負担を求めることになったというべきである。これを会員の側からすると、高額の払込金を支払うことは、単にゴルフをする(プレイする)ため当該ゴルフ場の施設を利用するについての対価に止まらず、当該ゴルフクラブが少数会員制をもって高級なゴルフ場として維持されることによる利益(前記のような快適な環境、利便性、高度のサービス、品位の維持等)を享受するための対価という特別の負担をすることを意味するということができる。
このようにしてみると、本件契約において会員数を四五〇名に維持すること、すなわち四五〇名という少数会員制をもって本件ゴルフクラブを運営することは、契約の内容となっており、しかも契約の基本的な内容になっていると認めるのが相当である。
三 このような基本的な契約内容を変更して会員の既得の権利に影響を及ぼすことになる場合には、個々の会員の同意を得ることが必要である。前記認定によると、被控訴人らは理事会決議に基づき会則を変更し会員数を増やすことによって、少数会員制という基本的方針を以後維持しないこととし、本件ゴルフクラブを少数会員制をもって運営するという基本的な契約内容を変更することになったのであるから、これにつき個々の会員の同意を得る必要があるというべきである。ところが、控訴人はこれに同意していないから、被控訴人らはなお控訴人に対し右契約内容に従った債務を履行する義務を負っていることになる。しかし被控訴人らにおいて右債務を履行することはできなくなったというべきである。
すなわち、前記のように会員権を分割して会員数が一二〇〇名にまで増加されることになることを承認し決定したこと自体、一般的に四五〇名という少数会員制を維持することを不可能とするものであり、それによって本件ゴルフクラブの基本的特性を失わせることになるのであるから、被控訴人らが右債務を履行することは不可能になった、すなわち履行不能となったというべきである。
《中略》
したがって、被控訴人らは連帯して控訴人に対し入会金五〇〇万円及び預託金五〇〇〇万円の返還義務を負うというべきである。
そうすると、被控訴人らに対し連帯して右入会金、消費税、預託金の合計五五一五万円及びこれに対する解除の意思表示の翌日である平成七年一二月一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める控訴人の主位的請求は理由があり、これを認容すべきである。
よって、これと異なる原判決を取り消し、主文のとおり判決する。
(新村正人 生田瑞穂 宮岡章)